EDSとは?
 
  エーラスダンロス症候群とは?
  自分の病気を知る意味
  病型(タイプ)について
    古典型
    関節可動亢進型
    血管型
    後側彎型
    多発性関節弛緩型
    皮膚弛緩型
    新型-D4ST-1 欠損型(古庄型)
  EDSの国際標準となる新しい型分類
    治療法
    診療科と予後
  GeneReviews 日本語版
   
 
病型(タイプ)について


 EDSという病気の名前を聞き、ご心配、ご不安を持っておられることかと思います。 
EDSは、皮膚、血管、関節、内臓などにある結合組織の生まれつきの“もろさ”により、病型(タイプ)にもよりますが、さまざまな症状を持つ疾患です。
結合組織にあるコラーゲン遺伝子やコラーゲン修飾酵素などの遺伝子の変化により生じます。

 主な症状には、皮膚や関節が伸びやすく、切れやすい、皮膚や血管がもろい、出血しやすい、が挙げられますが、症状の内容や程度は病型によって、また同じ病型でも個人によって異なります。

 病型は、主とする症状の特徴から、6つに大別されます(次項参照)。病型の正確な判定は、定期検診や救急医療体制の整備に必要不可欠なものですが、しばしば難しく、また他の結合組織疾患(マルファン症候群など)との鑑別を要することもあります。
なお、 EDSの診断、および病型の確定には、経験の豊富な医師による診察が最も重要です。生化学的検査や遺伝子検査によって確認を行うことができる病型もあります。


2017年3月にEDSの国際標準となる新しい型分類がEDSのInternational Consortiumにより発表されました。


病型

古典型(Classical type;旧分類Ⅰ型・Ⅱ型)
・症状 :
皮膚 :
      皮膚の感触はビロード状で、ぶつけたりこすれたり等の衝撃で簡単に裂けやすく、 また裂けた後の傷も治りにく い(脆弱性)。
治った後でも、シガレットペーパー様と呼ばれる瘢痕(細かい皺の集まった傷痕)を形成しやすい。
皮膚をつまむと数cmも伸び、離すと元に戻る(過伸展)。
  関節 : 
      大・小関節の可動域が広い(過可動)。
  その他 : 
      出血しやすい(皮膚の下の青黒い出血斑や歯ぐきの出血など)。
胎盤の早期剥離、前期破水による早産になりやすい。
心臓:僧帽弁逸脱がみられることがある。 (まれだが、報告例があるものとして)憩室(膀胱や消化管、器官壁の一部が内圧等により小さな袋状に突起する)
体が疲れやすい(易疲労性)。
       
・原因 :
    5型コラーゲン遺伝子(COL5A1、COL5A2)または1型コラーゲン遺伝子(COL1A1) 
     
・遺伝形式 :   
    常染色体優性遺伝。 
     
※ 旧分類では、症状が強いものをⅠ型、弱い方をⅡ型と呼んでいました。   
top




関節可動亢進型(Hypermobility type;旧分類Ⅲ型)
・症状 :   
  関節 : 
      全身の関節(肩、膝蓋骨、顎など)が緩く(過可動)、脱臼しやすい。慢性的な関節・四肢痛を伴う。
  皮膚 :
      古典型と同様の症状だが、過伸展は軽度で、また裂傷や瘢痕も稀である。
  その他 :
      僧帽弁逸脱、大動脈基部の拡張がみられることがある。
自律神経症状(立ちくらみなど)や消化器症状(過敏性大腸など)がみられることが多い。
EDSの全ての型の中で一番患者数が多いとされている。
 
       
・原因 :
    不明。
       
・遺伝形式 :
    常染色体優性遺伝とされている。    
top


血管型(Vascular type;旧分類Ⅳ型)
・症状 :
動脈破裂 : 
      胸腹部、頭、足などの動脈がもろい。動脈瘤、動脈解離が先行することもある。
  内臓破裂 :  
      消化管(S状結腸が多い)破裂を起こしやすい。妊娠中子宮破裂を起こすことがある。
       
  皮膚 :
      薄く、静脈が透けて見える。過伸展性はごく軽度である。皮下出血を反復しやすい。
       
  関節 :
      過可動性は軽度(指などの小さい関節が主)。先天性内反足が見られることもある。
       
  その他 :
      気胸を起こすこともある。
       
・原因 :
    Ⅲ型コラーゲン(COL3A1)遺伝子の変化。 
       
・遺伝形式 :
    常染色体優性遺伝。  
top


後側彎型(Kyphoscoliosis tyep;旧分類Ⅵ型)
・症状 :
  皮膚 : 
      Ⅰ型と同様で、症状は中程度。
  関節 : 
      過可動が見られる。新生児期または生後一年以内に進行性脊椎後側彎がみられる
  その他 :
    眼症状 : 角膜異常、強度の近視、網膜はく離、まれに眼球破裂。眼球の強膜はもろい。
      動脈 : 破裂することがある。 筋緊張低下。 骨粗鬆症。
       
・原因 :
    コラーゲン修飾酵素(できたままの“生”のコラーゲンを“使える”成熟したコラーゲンに仕上げる酵素)であるLysyl hydroxylase(PLOD)の変化。
       
・遺伝形式:
    常染色体劣性遺伝。
       
※ 同様の症状を持ちながらも、Lysyl hydroxylaseの変化が確認されるものはⅥA型、確認されないものはⅥB型と分類されている。 
top


多発性関節弛緩型(Arthrochalasia type;ⅦA、ⅦB型)
・症状 :  
  皮膚 : 
      過伸展性があり皮下出血ができやすい。
  関節 :
      全身性の関節過可動性が強く、脱臼を繰り返す。先天性股関節脱臼。脊椎後側彎。軽度の骨粗鬆症。
  その他 : 
      筋緊張低下。
       
・原因 :
    Ⅰ型コラーゲン遺伝子(COL1A1、COL1A2)の変化。 
       
・遺伝形式 :
    常染色体優性遺伝。
top


皮膚弛緩型(Dermatosparaxis type;旧分類Ⅶ型C)
・症状 : 
  皮膚 : 
      柔らかく緩い。余った皮膚がたるんだようになる。皮下出血しやすい。
  関節 :
      過可動性。骨粗鬆症。
  その他 :
      胎児にこの病気があると、胎盤の早期剥離、前期破水による早産になりやすい。
そけい・臍ヘルニアが見られることもある。
       
・原因 :
    コラーゲン修飾酵素であるprocollagen Ⅰ N-terminal peptidaseの変化。
       
・遺伝形式 :
    常染色体劣性遺伝。
top


新型 - D4ST-1欠損型(古庄型)
・症状 :
  皮膚 :
      過伸展性 ~ 弛緩、脆弱性、萎縮性瘢痕
手掌の深いしわ(末端早老症)、圧迫への過敏性。など
  関節 : 
      全身関節弛緩、慢性脱臼、変形(外反偏平足・凹足)、
先天性多発関節拘縮~内反足。
  その他 : 
      内出血しやすい、巨大皮下血腫、顔貌上の特徴など。
       
・原因 :
    デルタマン4-O-硫酸基転移酵素-1(D4ST1)の欠損 
     
・遺伝形式 :   
    常染色体劣性遺伝 
top


治療法
 古典型における皮膚、関節のトラブルに対しては、激しい運動を控えることやサポーターを装着するなどの予防が有用である。
 皮膚裂傷に対しては、慎重な縫合を要する。
 関節可動性亢進型においては、関節を保護するリハビリテーションや補装具の使用、また疼痛緩和のための鎮痛薬の投与を行う。
 血管型においては、定期的な動脈病変のスクリーニングおよびトラブル発症時の慎重な評価と治療(できる限り保存的に、進行性の場合には血管内治療を考慮)、また最近β遮断薬(セリプロロール)の有効性が報告された。
腸管破裂の発症時には、迅速な手術が必要である。
【参考】  

難病情報センターホームページ 難治性疾患研究班情報(研究奨励分野)
エーラスダンロス症候群(平成23年度)
http://www.nanbyou.or.jp/entry/2427  (2013/ 2/21アクセス)
 


関節可動亢進型 【 過剰運動 <hypermobility> 症候群 】
 疼痛管理が重要であり、理学的療法や装具や心理的なサポートも重要である。
リウマチ性疾患と症状が類似することがあるが、リウマチ性疾患への治療、外科的治療は無効である。
【参考】  

難病情報センターホームページ 難治性疾患研究班情報(研究奨励分野)
過剰運動<hypermobility>症候群(平成23年度) 
http://www.nanbyou.or.jp/entry/2288  (2013/ 2/21アクセス)
top



診療科と予後
 EDSの症状や経過についての情報は少しずつ集積しつつあります。
根本的な治療は研究段階ですが、おきやすい症状を知り、医療機関と連携をとって、丁寧に検診、治療を行っていくことが勧めます。

症状により、整形外科、循環器科、皮膚科などに複数の診療科・病院を受診することがあります。
そのため、お子様であれば小児科(総合病院の慢性疾患外来や小児病院の遺伝科外来)、成人の方であれば大学病院など総合病院の総合診療科や遺伝子診療部・遺伝診療科でコーディネートしてもらうとよいでしょう。
遺伝形式は、病型によって異なりますので、家族計画に関する相談は、個別に丁寧に対応する必要があります(それには、「遺伝カウンセリング」という診療サービスがあります)。

 得られる社会資源を活用しましょう。
お子様ですと、小児慢性特定疾患の申請ができます。成人の特定疾患(いわゆる難病)には指定されましたが、中々認定されにくい状況です。また、障害の程度により身体障害者手帳などの申請ができることがあります。

 この病気の認知度はまだ高いとはいえませんが、症状の予防や早期発見への努力、根本的治療への基礎的研究も、少しずつ進んでおります。
大切なことは、ご自身の体質の特徴をよく理解され、信頼できる医療機関と連携し、ともに学びながら、丁寧に検診、救急時の対応などの計画を立てていくことです。 
top


 Copyright (C) JEFA(Japan Ehlers-danlos syndrome Fellowship Association) 2006-