[名城大学総合研究所 難治性疾患発症メカニズム研究センター 第1回セミナー
古庄知己先生講演内容のご紹介]
日時
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2020年2月15日 16時~17時
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場所
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名城大学薬学部キャンパス
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参加者
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略
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講演テーマ
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筋拘縮型エーラスダンロス症候群の発見、病態解明、
そして治療法開発に向けた挑戦
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講演の概要
・信州大学医学部附属病院遺伝診療科の説明
現在当病院では11家族13人を診ている。これだけの患者数を診ている病院は世界唯一である。患者情報が集約する体制をとれたのは良い環境にある。
・エーラス・ダンロス症候群の説明
・患者さんとの出会い
・症例報告
・ゲノム医学的アプローチ
原因遺伝子CHST14の発見。
・機能解析
EDS,
Kosho Typeとして一時認知。
・2009/12/11
「Adducted thumb-clubfoot syndrome(内転母指-内反足症候群)《の原因遺伝子として
CHST14が報告された。論議を経て、これらは同一疾患であると結論付けられた。
・患者さんの身体的特徴
・最も深刻な合併症の1つ巨大皮下血腫
・2016/3/3 The Ehlers-Danlos Society 国際会議にて新分類の論議
本疾患は新たな1つの病型(musculocontractural EDS;筋拘縮型EDS)として認知された。
・筋拘縮型EDSの診断基準の策定
・健康管理指針の策定
・現在の研究内容紹介
名城大学での尿中 デルマタン硫酸/コンドロイチン硫酸 分析の研究
⇒筋拘縮型EDS 症候群患者には尿中 デルマタン硫酸/コンドロイチン硫酸
が検出されない。
いずれ尿分析が可能となれば非侵襲性マーカーとなり、治療効果の判定などに役立てられるだろう。
ノックアウトマウス胎盤の研究
⇒周産期致死が多く、研究が難しい。胎盤要因なのかもしれないというデータがある。
iPS細胞を用いた研究
⇒4吊のEDS患者の培養皮膚線維芽細胞からiPS細胞を樹立。いろいろな細胞に分化させて病態解明につなげていく。ただ、とても難しいのですぐ成果が出るものではない。
治療法開発研究
⇒デスモプレッシン点鼻療法による巨大皮下血腫の予防・治療
遺伝子治療の基礎研究にも取り組んでいる。
・質疑応答
Q.治療とはどのようなもの?年齢に関しては?
⇒深刻な合併症(皮下血腫など)が減ることを目指すための治療となる。
将来目指すところは、出生後診断されたらすぐに治療ができること。
Q.病態の差があるのはなぜか?
⇒個体により違うのは確かだが、似ている部分もある。きょうだいでも異なる。分からない部分が多い。
Q.きょうだい共に患者という家族もいるが、2人目の出産時にはどのような気持ちだったのだろうか。
⇒1人目がまだ診断されていない時期に、2人目を出産して同じ病気であったというケースがある。また、1人目の診断確定後に悩んだが2人目の出産を選択した家族もいる。
常染色体劣性遺伝なので1/4の確率です。遺伝カウンセリングを受けていただくことをおすすめします。遺伝確率も家族へ伝えた上で出産の判断してもらう。覚悟した上で出産する人もいる。
・感想
印象的だったのは、古庄知己先生の「新しい疾患を提唱することは、臨床遺伝学論文として最も価値ある事である、という先人の言葉に自分自身も励まされながら研究を続けた。《という言葉である。報告事例の無いことを研究し、自分達で道を切り拓いていくのは大変だったとおっしゃっていた。EDS患者は、体の上調を感じ一次医療機関を受診してもそこでエーラス・ダンロス症候群の可能性を示唆されることは少なく、専門医の元での診断へたどり着くまでに長い年月を要することが多い。自分の住んでいる町の医療機関では知られていなくとも、疑問を呈し続ける先にあるものを見失わないことが大切であると気づいた。
エーラス・ダンロス症候群に関する研究に全国の多くの研究者が携わっていることを知り、それはJEFAとして非常に励みとなった。治療法など表に出るまでは長く難しい道のりだが、未来をつくろうとしている気持ちは患者だけではなく、医療従事者と共に歩んでいることを実感ができた。『現在の研究内容紹介』に記したことは言葉の通り研究段階であるが、その確立に向けて従事している方の想いこそが私たちの希望である。
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